
ソーシャル・コミュニケーションデザイナー養成講座とは
京都大学ソーシャル・コミュニケーションデザイナー(SCD)養成講座は、社会のあらゆる場面において、デザインの視座からコミュニケーションをリードできる人材を育成します。学びや共創が求められる場面で、ひととひと、組織とひと、組織と組織のコミュニケーションがより前向きに進むように、現状をよく観察し、声なき声を拾い上げ、広い視野で考え、仕組みをデザインできる専門性を導きます。
誰ひとり取り残さない(leave no one behind)
2015年の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」では、これが原則とされました。
「誰ひとり取り残さないこと」、言い換えれば「基本的人権の尊重」とも言えるでしょう。この考え方は、古くから、それこそ、仏陀やイエス・キリストの時代から、必要な原則として唱えられてきました。しかし、紀元前から繰り返し語られてきたこの理念が、世界的のあらゆる日常まで浸透したことは、これまでにあったでしょうか。
人間には、基本的人権を重んじる気持ちと同じくらい、他者から奪うことや自分が優位に立つことを求める本能的な欲望も存在するのだと思います。貨幣、農業、工業といった仕組みの発明は、富の蓄積と集積を可能にしました。
「誰ひとり取り残さないこと」が、少なくとも建前としては世界的に浸透したいま、それを建前に終わらせず、現実の社会で実現するためには何をすべきでしょうか。
戦い、勝利し、富を蓄積するという世界観ではなく、共創し、尊重し合い、互いに支え合う世界観を構想すること。そして、それを個人の属人的な能力だけに依存せず「仕組み」として成り立たせ、他者を巻き込んでいくこと。そうしたスキルを備えた人材を、私たちは「ソーシャル・コミュニケーションデザイナー」と呼びたいと思います。そして、そうした人々が集い、学び合い、自らの問いと向き合いながら実践を深めていける場をつくること。それこそが、本講座の目指すことです。
講座概要
時 間 | 60時間(3時間×20コマ) |
期 間 | 約3ヶ月 |
定 員 | 1期 20名程度 |
開催形態 | 対面講座(オンライン対応はありません) |
開講場所 | 東京:京都大学東京オフィス、他 京都:京都大学、他 |
履修資格 | 基礎的なファシリテーションスキルを身につけている者。 具体的には、「関西大学ソーシャル・コミュニケーションリーダー養成講座(略称SCL)」を修了した者。 または、それと同等以上と認められるプログラムを修了した者。もしくは、それに準じる技能を有した者。 |
取得証明 | 京都大学 ソーシャル・コミュニケーションデザイナー (学校教育法に基づく履修証明プログラム修了) |
受講料 | 一般 180,000円(税込 198,000円) 特待生 100,000(税込 110,000円) |
給付・助成制度 | 【個人で受講される方】 ◎一般教育訓練給付金(厚労省) 一般教育訓練給付制度の支給対象者の方は、受講料の20%支給。 【企業の研修等の一環で受講される方】 ◎⼈材開発⽀援助成⾦(厚労省) 企業が従業員のスキルアップを目的として実施する研修に対し、研修費用や研修期間中の賃金の一部が助成される。 |
主 催 | 京都大学経営管理大学院 |
運営委託 | 一般社団法人ACCD大学コンソーシアム |

コンセプト
現代社会は複雑で変化に富み、社会の価値観も揺らぎ始めています。この時代において「新たな知識の獲得」以上に重要なのは、「どのように世界をみて、感じ取り、考えることができるか」、そしてそれを「どのような仕組みとして社会に出力するか」であると、私たちは考えています。
この講座では、多種多様な領域で「コミュニケーションの場づくり」を行ってきた研究者、実践者、アーティストの演習を受けるとともに、自ら問いを立てて社会課題に取り組んできた人々の話を直接聞き、現場を体験しながら探究していただきます。理論だけでなく、現実に密着した実践的なアプローチを重視し、参加者同士が刺激し合える環境を提供します。
あなた自身が、どのように世界をみて、感じ、考えるのか。そして、どのように問いにアプローチするのか。自分なりの「視座」と「方法論」を、講座を通してより一層磨いてください。

特徴
■理論と実践を両輪として知を磨く
この講座では、理論と実践を絶え間なく往還する環境のなかで、自らの実践知を磨き深めることを目指します。グループワークを中心としたカリキュラムでは、受講者はさまざまなコミュニケーションデザインを実体験し、その体験を通して自ら理論を抽出し、議論し、解説を受けながら思索を深めていきます。
■多彩な講師陣、受講生たちと刺激しあう
この講座には、研究者、アーティスト、起業家といった多彩な講師陣が参加し、多様なバックグラウンドをもつ受講生たちが集まります。そのなかで、個々が相互に作用し、刺激し合える環境をつくり出します。参加者それぞれの知を融合させ、新たな知を創造し続けることによって、各自が新しい視座を得るとともに、深い洞察を得ることを目指します。
■アーティストによる演習
アートは、個々のひとが主体となって発信する非常にパーソナルな営みです。集団でのアート(例:演劇、音楽、ミュージカル)では、演出家や指揮者が演者の価値観や表現をまとめ、合意しながらひとつのアートを生み出します。「個の表現」が「集団の表現」となっていくこのプロセスは、個々の基本的人権を尊重しながら社会を形成していく過程に似ています。
この講座では、アーティストによる演習を通じて、思考過程や創造のプロセス、それも言語にされていない根源的な部分に触れることで、認知限界を広げ、他者との共創の視点を養います。
■現場を直接みて、聞いて、対話し、実践する
研修科目や実習科目のなかでは、社会課題に果敢に挑む実践者たちの話を直接聞き、対話する時間を設けています。また、受講生自らがテーマを設定し、仕組みや制度設計の観点からデザインを考案する実習にも取り組みます。実践者との対話を通じて現場を肌で感じるとともに、自らも課題を探索し、デザインを試みることで、自己の内省を深めていきます。

カリキュラム
カリキュラムは全60時間。「演習」「研修」「実習」の3科目で構成されています。
演習 30時間 | 多様な分野で「コミュニケーションの場作り」を研究・実践している専門家による演習です。基本的には座学ではなく、アクティブラーニング型の内容になります。理論と体験を通じて「情報→対話→思考」のプロセスを経ることで新たな洞察を得ることを目指します。なお、研究者、実践者、アーティストなど多彩な講師を招聘します。 |
研修 9時間 | ソーシャルビジネスやコミュニティビジネスの起業家や、現場で活躍するファシリテーターの講義を通じて、実践的な知識を学びます。現場の実践を知り、体験することで、自身が「実践者」側に回るときのヒントとアイデアを獲得します。 |
実習 21時間 | グループでの修了研究を行います。これまでに学んだ理論や実践をもとに、受講生同士でテーマを決めて「仕組みのデザイン」を考案していただきます。実習時間の使い方は各グループに任され、フィールドワークに出ることも可能です。なお、個人の最終レポートとして、企画提案書を提出してもらう予定です。 |

達成目標
✔️ 社会における様々な課題を知り、深く考え、構造的に捉える。
✔️ 価値観の共創を体験し、思考の深化に努める。
✔️ 学びや共創の場が社会実装されるための仕組みをデザインし提案する。

修了要件
本講座の修了者には、学校教育法に基づく履修証明書が発行されます。
本講座の修了には、下記(A)(B)の双方を満たすことが必要です。
(A)3時間×全20回のうち、3分の2以上に出席すること。
(B)中間レポートおよび最終課題について60点(100点満点)を得点すること。