京都大学ソーシャル・コミュニケーションデザイナー(SCD)養成講座は、社会のあらゆる場面において、デザインの視座からコミュニケーションをリードできる人材を育成します。学びや共創が求められる場面で、ひととひと、組織とひと、組織と組織のコミュニケーションがより前向きに進むように、現状をよく観察し、声なき声を拾い上げ、広い視野で考え、仕組みをデザインできる専門性を導きます。
2015年の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」では、これが原則とされました。
「誰ひとり取り残さないこと」、言い換えれば「基本的人権の尊重」とも言えるでしょう。この考え方は、古くから、それこそ、仏陀やイエス・キリストの時代から、必要な原則として唱えられてきました。しかし、紀元前から繰り返し語られてきたこの考え方が、世界的に、日常の至るところまで浸透したことは、これまでにあったでしょうか。
人間のなかには、基本的人権を重んじる気持ちと同じくらいに、他者から奪うことや自分が優位に立つことを求める本能的な欲望も存在するのだと思います。貨幣、農業、工業といった仕組みの発明は、富を積み上げ、集積させることを可能にしました。
「誰ひとり取り残さないこと」が、少なくとも建前としては、世界的に浸透するようになったいま、それを建前に終わらせず現実の社会において実現するには、何をすべきでしょうか。
戦い、勝利し、富を蓄積するという世界観ではなく、共創し、尊重し合い、互いに支え合う世界観を構想すること。それを実現するために、個人の属人的な能力だけでアプローチするのでなく、「仕組み」として成り立たせて、他者を巻き込んでいけること。そうしたスキルを備えた人材を、ソーシャル・コミュニケーションデザイナーと呼びたいと思います。
そして、そんなひとびとが集まり、学び合い、自らの問いと向き合い、実践を深めていけるような場をつくることを、京都大学SCDは目指しています。
現代社会は、複雑で変化に富み、社会の価値観そのものも揺らぎ始めています。この時代において「新たな知識の獲得」以上に重要なのは、「どのように世界をみて、感じ取り、考えることができるか」そしてそれを「どのような仕組みとして社会に出力するか」であると、私たちは考えています。
この講座では、多種多様な領域で「コミュニケーションの場づくり」を行ってきた研究者、実践者、アーティストの演習を受講するとともに、自ら問いを立てて社会課題に取り組んできたひとびとの話を直接聞き、現場をみて、それらについて探究していただきます。理論だけでなく現実に密着した実践的なアプローチを重視し、参加者同士がお互いに刺激し合える環境を提供します。
あなた自身が、どのように世界をみて、感じ、考えるのか。そして、どのように問いに対してアプローチするのか。自分なりの「視座」と「方法論」を、講座を通してより一層磨いてください。
この講座では、理論と実践を絶え間なく往還する環境のなかで、自らの実践知を磨き深めることを目指しています。グループワークを中心に構成されたカリキュラムのなかで、受講者はさまざまなコミュニケーションデザインを実体験します。体験のなかで自ら理論を抽出し、議論し、解説を受けることを通して思索を深めます。
この講座は、研究者、アーティスト、起業家といった多彩な講師陣と、多様なバックグラウンドをもつ受講生たちが集まるなかで、個人個人が相互作用を起こすことができるような環境を目指しています。それぞれのもつ知を融合し、新しく知を創造し続けることで、個人個人の新しい視座の獲得と、深い洞察を醸成します。
アートは、個々の人が主体となって発信する非常にパーソナルな営みです。集団でのアート(例えば演劇、音楽、ミュージカル)では、演出家や指揮者という役割が、演者個々人の価値観や表現をまとめ上げ、合意しながら、新たなひとつのアートとして表現していきます。「個の表現」が「集団の表現」になっていくプロセスは、個々の基本的人権を尊重しながら社会を形成していくプロセスに似ていると言えます。
この講座では、一部の演習にアーティストを講師として迎えています。アーティストの思考や創造のプロセス、それも言語的に整理されていない根源的な部分に触れることで、個人の認知限界を広げ、ネガティブケイパビリティの態度を育み、他者との共創を進める視点を獲得します。
研修科目、実習科目のなかで、社会課題に果敢に挑む実践者たちの話を直接聞き、対話する時間を設けています。また、受講生自らがテーマを決めて、仕組みや制度設計の観点からデザインを考案する実習課題にも取り組みます。実践者たちとの対話から現場を肌で感じると共に、自らも課題を探索し、デザインを試みることで、内省を深めます。
多様な領域において「コミュニケーションの場作り」に関する研究、実践を行っている研究者、実践者、プロのアーティストによる講義を受ける科目です。 演習プログラムは座学ではなく、講義を受けた受講者同士がディスカッションを行うなど、アクティブラーニング型の講座形態になります。理論とアクティビティを通じ「情報→対話→思考」のプロセスを経ることで新しい洞察を導きます。
ソーシャルビジネス、コミュニティビジネスの起業家や、ファシリテーターとして実際に現場で活躍されている方の講義を受ける科目です。現場でおこなわれている実践を知り、体験することで、自身が「実践者」側に回るときのヒントとアイデアを獲得し、新規事業の起案や、自身の事業領域の拡大、深化を目指します。
これまでに学んだソーシャルコミュニケーションデザインの理論や実践をもとに、グループでの修了研究ポスター発表を行います。
受講生同士でリサーチテーマを決めて「仕組みのデザイン」を考案していただきます。実習時間の時間の使い方などグループ単位でマネジメントしていただきながら、フィールドワークや文献調査などに取り組んでいただきます。なお、個人の最終レポート課題として、企画提案書を提出していただく予定です。
すべての条件を満たすと、京都大学より学校教育法に基づく履修証明書が発行されます。
専門は演劇教育、コミュニケーションデザイン。「小劇場での演劇でしか絶対に表現できない舞台表現」を極めるべく、1995年に劇団衛星を設立。京都を拠点に、既存のホールのみならず、寺社仏閣・教会・廃工場等「劇場ではない場所」で公演を数多く行い、茶道劇「珠光の庵」や裁判劇「大陪審」などの代表作を全国で上演する。同時に、演劇の持つ社会教育力に着目し、そのポテンシャルを利用したワークショップ事業を多く手がける。並行して研究活動に取り組み「演劇のないところに演劇を送り込む」活動を幅広く展開している。
一橋大学大学院,経営管理研究科博士後期課程修了。2021年から京都大学経営管理大学院管理会計寄附講座特定助教として勤務。2024年から現職。専門は管理会計。優れた品質の製品を製造する企業に対するインタビュー調査・研究を実施。その過程で,優れた製品を生み出しつづける企業において複雑な管理会計が用いられているわけではなく,非常に「シンプル」な管理会計が実施されていることが判明。以降こうした実務をシンプル管理会計として研究を続けている。
2018年にバイセクシュルかつXジェンダーであることを公表し、LGBTQ当事者医師としての活動を開始した。2021年にはプライマリ・ケアに従事する医師5名で一般社団法人にじいろドクターズを設立し、理事として主に医療関係者を対象にLGBTQの人々のケアに関する講演活動やワークショップ等を行っている。日本プライマリ・ケア連合学会ダイバシティ推進委員会、日本医学教育学会多様性推進委員会の委員を務め、自身の医療機関が所属する全日本民医連では新たにSOGIEコミュニティを創設し、全国どこででも、どんなセクシュアリティの人でも安心して医療にアクセスできるよう啓発を進めている。
1980年大阪生まれ。博士(社会学)。専門社会調査士。京都市まちづくりアドバイザーのほか、劇団「ぬるり組合」作家、演出家。谷町町内会会長。
大学在学中より、住民参加のまちづくりの実践と研究に携わる。大学院で研究を続ける傍ら、2006年よりまちづくりNPO法人の事務局として京都市の公共施設の委託運営の現場で実務経験を積む。2011年より現職。
代表作に『モテるまちづくり−まちづくりに疲れた人へ。』(まち飯叢書、2014)。2014年から、各地の本書に関心を持つ方と語り合う読書会「モテまち読書会」ツアーを実施。2017年4月時点で55箇所延べおよそ1500名の実践者と語り合ってきた。その読書会ツアーで得られたフィードバックを元に、『純粋でポップな限界のまちづくり−モテるまちづくり2』(まち飯叢書、2017)を出版。近著に『世界で一番親切なまちとあなたの参考文献』(まち飯叢書、2020)がある。
「演劇の複製性」「純粋言語」を主題に、有人・無人の演劇作品を制作する。
2014年9月-2017年8月アトリエ劇研ディレクター。2018年、美術家森村泰昌の一人芝居を演出し、ポンピドゥーセンターメス(仏)、ジャパンソサイエティ(米)にて上演。
2017年1月、(一社)アーツシード京都を大蔵狂言方茂山あきら、美術作家やなぎみわらと立ち上げ、2019年6月にTHEATRE E9 KYOTOを設立・運営する。
2021年上演のオペラ「ロミオがジュリエット」(太田真紀&山田岳主宰 作曲:足立智美)を演出し令和3年度文化庁芸術祭賞大賞とサントリー芸術財団第21回佐治敬三賞の両賞を受賞。
1969年・吉野生まれ。3歳より詩作、17歳から朗読をはじめ、18歳から京大西部講堂に出入りし、今から思えばアーツマネジメントを学ぶ。「下心プロジェクト」を立ち上げ、ワークショップなどの企画、場作りを開始。2001年「詩業家宣言・ことばを人生の味方に」と活動する。2003年、大阪・新世界で喫茶店のふりをしたアートNPO「ココルーム」を立ち上げ、2012年に開講した「釜ヶ崎芸術大学」はヨコハマトリエンナーレ2014に参加。2016年ゲストハウス開設。釜ヶ崎のおじさんたちとの井戸掘りなど、あの手この手で地域との協働をはかる。
大阪公立大学都市科学・防災研究センター研究員、NPO法人こえとことばとこころの部屋(ココルーム)代表理事。堺アーツカウンシル プログラム・ディレクター。大手前大学非常勤。著書「釜ヶ崎で表現の場をつくる喫茶店、ココルーム)フィルムアート社
2016年より京都市南区にてハピネス子ども食堂を立ち上げる。以来年間延べ利用者数は5500名に登る。2019年からはコミュニティカフェをオープン。地域のシニアクラブと協働し高齢者の居場所づくりにも取り組み、またひきこもり状態にある人々の就労支援の受け入れも実施。2022年には女性用シェルターを民間の資金を活用しスタート。同年、子ども食堂の認知度向上を目指したイベント「西寺公園秋祭り」を開催。地域、企業、行政を巻き込み、子育て世帯をはじめとした約3000人を超える来場者を記録。
2006年京都大学工学研究科博士課程修了。博士(工学・京都大学)。2005年より日本学術振興会特別研究員(DC2)、2006年より同(PD)。2008年より立命館大学情報理工学部助教、2010年より同准教授。2015年より2016年までImperial College London客員准教授。
2017年より立命館大学情報理工学部教授。2024年より現職。知的書評合戦ビブリオバトル発案者。コミュニケーション場のメカニズムデザインの理論を構築。記号創発ロボティクスを核としたAI・ロボティクスの研究者。広く「人を系に含んだ創発システム」が対象。
1979年大阪府高槻市生まれ。関西学院大学文学部卒業。大学卒業後、インド・コルカタ(カルカッタ)にあるマザーテレサの施設でボランティア活動を行う。ボランティアで様々な刺激を受け、帰国後、たまたま大阪の路上で見かけたビッグイシュー販売者のことを友人から教えてもらい、ビジネスの手法で社会問題の解決に挑戦する社会的企業に興味を持つ。その後、ビッグイシューのボランティアを経て、2005年より販売サポートスタッフとして就職。社会的排除・孤立の最たる状態であるホームレス問題からみんなが活き活きできる社会を考えながら販売者の日々のサポート、イベント企画、講演活動などを行う。現在は大阪事務所長を兼務し、事務所運営などを行う。
関西大学商学部卒、京都大学経営管理大学院修了。メーカーにてITソリューションの企画開発やM&Aなどの事業開発に従事。京都大学で新規事業創出方法論を専門に研究し、感情を重視した新規事業創出方法論を開発する。MBA取得後、株式会社SciEmoを設立。新規事業創出サポート、ブランディング、新規事業ワークショップをサービス提供しながら、自社でもクローズドSNSサービスやITソリューション・プロダクトを新規開発・販売している。
専門は教育方法学、教師教育学。京都大学大学院教育学研究科博士後期課程満期退学。演劇的手法を用いた学習の可能性を現場の教員と共に探究する「学びの空間研究会」を主宰。演劇教育・ドラマ教育関連の業績に関して、日本演劇教育連盟より演劇教育賞、全国大学国語教育学会より優秀論文賞、日本教育方法学会より研究奨励賞を受賞。授業や模擬授業の「対話型検討会」の取り組みなど教師教育分野でも活躍。
著書として『なってみる学び ―演劇的手法で変わる授業と学校』(共著、時事通信出版局)、『小学校の模擬授業とリフレクションで学ぶ 授業づくりの考え方』(単著、くろしお出版)、『流行に踊る日本の教育』(共著、東洋館出版社)、『〈教師〉になる劇場』(共著、フィルムアート社)など。
各地で市民協働のプロジェクトやコミュニティプログラムを手がけ、劇場・ミュージアム・図書館・公園・商店街・団地などを多様な人たちが出会い・創造していく場に変えている。またファシリテーターやアートプロデューサーの育成も手掛ける。兵庫県伊丹市で手がけた「伊丹オトラク」「鳴く虫と郷町」は地域連携・地域協働のプロジェクトとして20年続く。(「鳴く虫と郷町」は2015年「第6回地域再生大賞」優秀賞受賞)
2021年に京都市立芸術大学院にて、関係や場を扱う美術家、小山田徹氏に師事し、改めて自身の活動を見直す。現在はコミュニティ活動を推進する際に発生する「結束の強さ」の逃れ方を模索し、「社会の出合頭を変えるお手伝い」「弱い場の考察」「ふりの研究」をテーマに活動する。釜ヶ崎芸術大学(旧ココルーム)にて、月2回程度、まかないキッチンスタッフのふりをしている。
東京都立高校で11年、国立中高一貫校で25年国語科教師や古文教師をつとめた。成り行きで2004年から演劇の専門家と組んだ授業開発を開始。文科省「コミュニケーション教育会議」WG委員、東京学芸大学非常勤講師を経て、2021年芸術文化観光専門職大学の新設を機に今さらのように研究の場に赴任。演劇教育史、演劇ワークショップを専門に、但馬(兵庫県北部)地域の豊富な演劇ワークショップ現場で年間150日強のフィールドワークを行い、「学校」という現場の多様性や魅力を再発見しつづけている。大学以外に、看護専門学校や総合高校、中学校などでも演劇をつかった授業を継続的に行っている。
日 | 時間 | 区分 | 講師 | 会場 | |
---|---|---|---|---|---|
1 | 5月11日(土) | 9:30-12:30 | 演習1 | 蓮行 | 楽友会館 |
2 | 5月11日(土) | 13:30-16:30 | 演習2 | 飯塚隼光 | 楽友会館 |
3 | 5月18日(土) | 9:30-12:30 | 演習3 | 吉田絵理子 | 楽友会館 |
4 | 5月18日(土) | 13:30-16:30 | 演習4 | 谷亮治 | 楽友会館 |
5 | 6月1日(土) | 10:00-13:00 | 演習5 | あごうさとし | 杉浦ホール |
6 | 6月1日(土) | 14:00-17:00 | 演習6 | 上田假奈代 | 杉浦ホール |
7 | 6月8日(土) | 10:00-13:00 | 研修1 | 宇野明香 | 杉浦ホール |
8 | 6月8日(土) | 14:00-17:00 | 実習1 | 蓮行 | 杉浦ホール |
9 | 6月22日(土) | 10:00-13:00 | 演習7 | 谷口忠大 | 杉浦ホール |
10 | 6月22日(土) | 14:00-17:00 | 研修2 | 吉田耕一 | 杉浦ホール |
11 | 6月29日(土) | 10:00-13:00 | 演習8 | 丸本瑞葉 | 杉浦ホール |
12 | 6月29日(土) | 14:00-17:00 | 研修3 | 丸本瑞葉 | 杉浦ホール |
13 | 7月6日(土) | 10:00-13:00 | 実習2 | - | 杉浦ホール |
14 | 7月6日(土) | 14:00-17:00 | 演習9 | 渡辺貴裕 | 杉浦ホール |
15 | 7月20日(土) | 10:00-13:00 | 演習10 | 蓮行 | 杉浦ホール |
16 | 7月20日(土) | 14:00-17:00 | 実習3 | - | 杉浦ホール |
17 | 7月27日(土) | 10:00-13:00 | 実習4 | - | 杉浦ホール |
18 | 7月27日(土) | 14:00-17:00 | 実習5 | - | 杉浦ホール |
19 | 8月3日(土) | 10:00-13:00 | 実習6 | 蓮行 | 杉浦ホール |
20 | 8月3日(土) | 14:00-17:00 | 実習7 | 蓮行 | 杉浦ホール |
エクストラ | 8月24日(土) | 9:30-12:30 | 演習 | 調整中 | 楽友会館 |
エクストラ | 8月24日(土) | 13:30-16:30 | 研修 | 調整中 | 楽友会館 |
2024年度第1期募集は終了いたしました。
2025年度も開講予定です。
なお募集に関する情報をタイムリーに受け取りたい方には、ぜひ「京大SCDお知らせメール」にご登録をお願いいたします。
説明会や募集に関する情報の他にも、関連イベント・シンポジウム等に関する情報を不定期に配信いたします。
京都大学SCD第1期開講に関して、講座説明会(無料)を開催いたします。
説明会はオンラインにて実施します。
キャンセルのお申し出をされた場合、下記規定に基づいてキャンセル料をいただきます。
2024年4月21日まで:キャンセル料なし
2024年4月22日(合否通知送信日)から4月30日まで:受講料の50%をキャンセル料としてお支払いいただきます。
2024年5月1日から5月3日まで:受講料の70%をキャンセル料としてお支払いいただきます。
それ以降:受講料の100%をキャンセル料としてお支払いいただきます。
※本講座は「受講申込」の段階で正式な参加申込が完了しており、合否通知をもって参加が確定するものとなります。いかなる場合も、受講料のお支払いのないことをもってキャンセルとはみなしません。キャンセルの際は必ずご連絡ください。
※合否通知の送信前は、キャンセル料は要しません。