概要
大阪大学の学部生を対象とした授業「⼈間変容論2「演劇ワークショップとその評価法」(担当教員:藤川信夫教授 紙本明子特任研究員)に、株式会社スギ薬局、三菱電機株式会社、DUNLOP 住友ゴム工業の皆様をゲストにお迎えし、対話型演劇ワークショップの特別授業を実施しました。
この取組は、「京都大学コミュニケーションデザインとDE&Iコンソーシアム」の実験的な取組として、会員団体を対象に募集して実施しました。社会人と学生がフラットに語り合うことで、企業側は学生の視点から新たな気づきを得て、学生は現場のリアルな課題に触れることで社会との接点を深めていくことを目指しています。
スギ薬局 × 大阪大学 特別授業(2025年10月29日開催)
DE&Iとは何か―「時短勤務と管理職登用」をめぐって考える

2025年10月29日、大阪大学にて、スギ薬局グループによる特別授業を実施しました。
本授業は、働き方の多様化が進むなかで、学生が企業の現実的な課題に向き合いながら「DE&Iとは何か」を考えることを目的に行われました。
授業冒頭では、スギホールディングス株式会社の企業紹介がありました。全国展開する店舗ネットワークを基盤とした「トータルヘルスケア戦略」や、自治体との包括協定による健康まちづくり、デジタル活用の取組などが紹介されました。
ディスカッションでは、学生たちが社会経験の有無を超えて、企業の複雑な悩みに向き合い、多様な視点から意見を交わしました。
社員の皆様からは「学生のみなさんの想像力に驚いた。短時間で多様な観点から意見を受け取ることができた」「もともとの相談テーマについて参考になるアドバイスはもちろん、コミュニケーションや議論の仕方についてもたくさん学ばせていただいた」といった感想が寄せられました。


ラウンドテーブル後の全体共有では、「『不公平感が出るのでは』という意見が出たが、管理職個人の問題ではなく、チーム全体の問題として考えることが重要」「現実に生じうる問題を考えると、時短勤務の方の管理職登用には勇気がいるのだなと実感した」「振り切って、とりあえず方針を決めるのも手なのではないか」といった様々な意見があがりました。
各チームからの演説ターンでは「家庭の事情でフルタイムで働くのが難しい人も管理職になることができるというロールモデルは必要」「他の従業員にとって不公平感が高くなるのではないか」「サポート体制やリモート勤務を条件にすれば可能では」「本人の業務負担軽減のためにも、まずはサブリーダーの立場を経験してもらってはどうか」など、実際の職場で起こりうる視点から多様な意見が出され、議論は白熱しました。
今回の授業では、管理職登用における「多様性」「公平性」「働き方改革」といったテーマを深く考察する貴重な機会となりました。授業後の学生アンケートの集計と分析は、2025年11月27日に開催しました「京都大学コミュニケーションデザインとDE&Iコンソーシアム 東京フォーラム2025」にてポスター発表されました。
イベントレポートはこちら(https://art-cd.gsm.kyoto-u.ac.jp/dei/report251127/)からご覧いただけます。

三菱電機 × 大阪大学 特別授業(2025年11月12日開催)
学生と社会人が共に「心理的安全性とカルチャー変革」を考える

2025年11月12日、大阪大学にて、三菱電機株式会社の皆様による特別授業を実施しました。
本授業は、学生と社会人が垣根を越えて多様な意見を交わし、新たな視点を得ることを目的に開催されました。冒頭では、三菱電機DE&I推進室の小川薫さん、カルチャー変革室の河原弘幸さんから、同社が掲げるマテリアリティ「すべての人の尊重」や「サステナビリティを志向する企業風土づくり」に基づく取組、品質不適切行為問題を契機に始まった組織風土・品質風土・ガバナンス改革の歩みが紹介されました。また、社員からの提言によって生まれた「骨太の方針(マイナスからゼロへ/ゼロからより良い未来へ)」など、現場主体で進められてきたカルチャー変革の実践も共有されました。
後半のワークショップでは、学生たちが5人ずつのグループにわかれ、架空の企業に扮した会議ロールプレイを実施し、その体験をもとに「心理的安全性を高めるチーム」について考えました。
ロールプレイ後の振り返りでは、「“責任追及役”の発言が続き時間をロスしてしまった」「発言の順番で議論の結果は変わったかもしれない」「リーダーが全ての指示するのは結構プレッシャーだった」など、多くの気づきが多く共有され、賛同や相互支援の重要性が語られました。


解説では「行動分析学」の考え方が紹介され、相手の行動が期待と異なる場合でも「自分を問題の外側に置かず、自分の発する“きっかけ”や“みかえり”を見直すこと」が心理的安全性を高める鍵であると説明されました。
今回の授業は、“心理的安全性”を概念として学ぶのではなく、行動として実感する実践的な試みとなりました。三菱電機の河原さんは「社内でもまだ試していない手法を学生のみなさんと実験でき、多くの学びがあった」と振り返り、学生・社会人双方にとって学び合う貴重な場となりました。
DUNLOP 住友ゴム工業 × 大阪大学 特別授業(2025年12月3日開催)
DE&Iのリアルを解く―「管理職のハードルと選択肢の拡充」をめぐって考える

2025年12月3日、大阪大学にて、住友ゴム工業株式会社(DUNLOP)による特別授業を実施しました。講師として、同社サステナビリティ経営推進本部の宮城ゆき乃さん、島田菜実さん、大塚智美さんの3名にお越しいただき、学生が架空企業の若手社員としてDE&Iの課題に向き合う体験型学習を実施しました。
冒頭、島田さんからの企業紹介では、世界的なタイヤメーカーである同社の長期経営戦略「R.I.S.E. 2035」が紹介されました。その中で、社会の多様化を背景とした今後の事業拡大や人材活用において、DE&I推進が重要な役割を担うことが語られました。
後半のセッションでは、学生が「入社1〜3年目の若手社員」を演じ、2つのテーマで議論を展開しました。
テーマ①「女性管理職比率向上の是非」では、学生からは「女性管理職を増やさない理由が見当たらない」というコメントも上がりました。議論の中では、採用時点での女性の母数拡大や、管理職への心理的・物理的ハードルを組織全体で下げる必要性が指摘され、具体的な施策として、候補者向け座談会や、業務分担を前提とした「部長補佐制度」の導入など、多様な人材が自然に活躍できる環境づくりが提案されました。


テーマ②「働きやすさ vs 働きがい(重視すべき方向性)」では、二者択一ではなく、個人の志向やライフステージに応じた「選択肢の拡充」を求める意見が中心となりました。直属の上司とは別の「相談役」を配置し、個人の希望や不満を可視化することで、一人ひとりに寄り添うマネジメントを実現するといったアイデアが出されました。
まとめ
今年度は実験的な取り組みとして行った「特別授業」でしたが、学生にとっては企業における本物の組織課題に触れ、思考し、対話するという非常に貴重な経験を得ることができました。また、企業にとっても、組織改革という困難なプロセスに対して、柔軟で鋭い学生の生の視点からの意見・フィードバックを得る貴重な機会となったと思います。
今回の取り組みでは、社会人から学生に「正解を教える」のではなく、両者の間で「問いを共有する」をデザインとしたことで、両者の知を結ぶコミュニケーションデザインとして機能したと振り返っています。
京都大学DE&Iコンソーシアムでは、来年度も大学との協働的な場づくりを継続し、互いに学び合う関係のなかから新たな知の創造を目指してまいります。
