レポート|「アート×福祉×DE&I」クロスオーバーM(2024/7/22)

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2024年7月22日、京都大学にて「『アート×福祉×DE&I』クロスオーバーミーティング~対話と集合知生成の実践~」が開催されました。福祉系企業や医療従事者が参加し、分野を横断して多様性や包摂に関する議論が行われました。以下に当日の様子を報告いたします。

蓮行先生(経営管理大学院 特定准教授)が司会進行を務め、話題提供をしてくださる「テーマスピーカー」として、以下の方々にご登壇いただきました。

・森和明さん(株式会社ユヤマ 学術部 部長)

・上野敬人さん(株式会社ユヤマ 学術部 主査)

・河本歩美さん((福)京都福祉サービス協会 高齢者福祉施設 紫野 施設長)

・木村深雪さん(株式会社よしもとセールスプロモーション&エリアアクション 取締役)

また、会場参加者も「インタラクター」として、それぞれの視点からアートと福祉の交差点について語りあいました。

まず、ファーストスピーカーの森さんから、超高齢社会における「聴こえの問題」を提示していただきました。超高齢社会における医療においては、薬剤師の対人業務がますます重要になってくると予想されます。しかし、実際は高齢者の多くが難聴であり、聴こえのレベルが薬剤師へのエンゲージメントに影響していたという研究結果を通じて、薬の適正使用や服薬指導に支障をきたしている可能性が指摘されました。

「聴こえの問題」に関しては、木村さんから芸人の方が介護現場で行うワークショップにおいての実践例も紹介していただきました。介護現場では、参加者の状態を考慮し、話す音量やスピードや間合いに工夫を凝らしているとのことでした。

また、議論の中では聴力の問題だけでなく、参加者の興味や関心を引き出すことの重要さや、介護現場における認知症の問題も指摘されました。

これらの問題に関して、AIの活用による高齢者支援についての可能性が言及されました。AIを用いて高齢者の状態を解析し、医療機関とデータを共有することができれば、より適切な対応ができるかもしれないとのことです。AIを補助的に用いた情報の活用については、さまざまな課題はあるものの、介護の質を高め、そして介護施設利用者の自尊心を守るために役立つのではないかという議論がなされました。

最後に、オンラインでご参加いただいた上野さんからは、DE&Iについて、ご自身の経験をもとに話題提供をしていただきました。どのように「相互理解」が可能かという悩みについて、参加者に問いかけていただきました。

イベント参加者からも、多くの意見や質問が寄せられました。現場での個別対応の難しさや、AIの導入に際しての倫理的課題についての懸念など、さまざまな知見や議論が交換されました。

今回のクロスオーバーミーティングを通じて、超高齢社会におけるコミュニケーションの重要性と、その質を向上させるための新しいアプローチが求められていることが示されたと感じております。

以上、「『アート×福祉×DE&I』クロスオーバーミーティング」の報告でした。参加者の皆様、および関係者の皆様に心より感謝申し上げます。