レポート|2025前期 ILASセミナー特別授業レポート

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概要

京都大学の学部生を対象とした授業「ILASセミナー:アートとコミュニケーションデザイン」に、三菱電機株式会社、株式会社スギ薬局の皆様をゲストにお迎えし、対話型の特別授業を実施しました。
この取組は、「京都大学コミュニケーションデザインとDE&Iコンソーシアム」の実験的な取組として、会員団体を対象に募集して実施しました。社会人と学生がフラットに語り合うことで、企業側は学生の視点から新たな気づきを得て、学生は現場のリアルな課題に触れることで社会との接点を深めていくことを目指しています。


三菱電機 × ILASセミナー特別授業(2025年5月28日開催)
学生と社会人が共に「組織風土改革」を考える


2025年5月28日、三菱電機のみなさんによる特別授業を実施しました。この授業では、学生と社会人が共に「組織風土改革」を考える授業となりました。講義のなかでは、三菱電機のみなさんから自社で取り組まれている「組織風土改革」の背景と実践事例をご紹介いただいた上で、3名の社員の方々から現場の課題意識を “カルテ形式” で提示いただき、「悩み相談」を行いました。「自律と統制のバランスをどう取るべきか…」「組織風土改革を定量化して評価すべきか…」「人的・環境資本と、製造・知的資本どちらに投資すべきか…」という現場のリアルな悩みに対して、学生たちはグループに分かれ、対話を進めました。

ディスカッションでは、学生たちが社会経験の有無を超えて、企業の複雑な悩みに向き合い、多様な視点から意見を交わしました。
社員の皆様からは「学生のみなさんの想像力に驚いた。短時間で多様な観点から意見を受け取ることができた」「もともとの相談テーマについて参考になるアドバイスはもちろん、コミュニケーションや議論の仕方についてもたくさん学ばせていただいた」といった感想が寄せられました。


スギ薬局 × ILASセミナー特別授業(2025年6月4日開催)
「DE&Iとは何か-女性管理職登用から考える-」


2025年6月4日、スギ薬局グループによる「DE&Iとは何か-女性管理職登用から考える-」の授業が行われました。
会社紹介の後、アクティブラーニングプログラムでは「時短を選択した管理職は公平か不公平か」をテーマに、ディベートと演劇的手法を用いたアクティブラーニングプログラムを実施。学生はランダムに与えられた主張でグループプレゼンやディスカッションを行い、グループにはスギ薬局の社員も参加して学生と社会人の壁を超えた関係性の中で、忌憚のない意見交換が行われました。



これにより、管理職登用における「多様性」「公平性」「働き方改革」といったジレンマを深く考察する貴重な機会となりました。社員の皆様からは、「短い時間で高度な議論ができていて驚いた。」「学生の皆さんの着眼点もさまざまで、たくさんの気づきを得ることができました。」という感想をいただきました。

本授業は、社会で働いたことのない学部生にとっても、ユーザーであり採用される側という『知らない』視点を活かせる、垣根を越えたプログラム設計であり、また、普段とは異なる大人(スギ薬局の社員の皆さん)の視点が入ったことで、視野が広がり、多角的な学びの機会になったと実感しています。

まとめ

今年度は実験的な取り組みとして行った「特別授業」でしたが、学生にとっては現実の組織課題に触れながら対話するという実践的な経験となりました。また、企業にとっても、組織改革という困難なプロセスに対して、柔軟で鋭い外部の視点からのフィードバックを得る貴重な機会となったと思います。

今回の取り組みでは、社会人から学生に「正解を教える」のではなく、両者の間で「問いを共有する」デザインとしたことで、両者の知を結ぶコミュニケーションデザインとして機能したと振り返っています。

京都大学DE&Iコンソーシアムでは、今後もこのような協働的な場づくりを継続し、互いに学び合う関係のなかから新たな知の創造を目指してまいります。